登山靴の内側が濡れる理由

登山靴の内側が濡れて困った!と言う経験は誰しも1度はあるかと思います。現在の登山靴は「ゴアテックス」と言う防水透湿に長けたフィルムを靴の内部に貼っています。このゴアテックスにあいている穴の大きさが、水蒸気より大きく、水より小さいので、足から出る汗(水蒸気)は外に出し、外からの雨(水)は内部に浸入しないと言う優れものです。しかし、実際はゴアテックスを使った登山靴でも内側が濡れる現象は起こります。その理由をいくつかご紹介いたします。

➀ゴアテックスの損傷

一番考えられる可能性です。使用頻度や年数によりゴアテックスが損傷し破れてしまうと、当然その部分から水が入ります。5年以上経過している靴は、使用頻度に関係なく「劣化」の可能性も有ります。画像の様にゴアテックスにも縫い目がありシームテープを貼っています。劣化によりテープが剥がれると水が入ります。

②表面の素材のお手入れ不足

ゴアテックス入りの登山靴の構造は、「内側の素材+ゴアテックス+表面の素材」の3層構造です。一番外側の「表面の素材」のお手入れを怠ると、雨の日「表面の素材」が水を弾かず保水します。表面の素材に吸収された水分は、乾いた場所を探し広がります。乾いた場所、つまり靴の内側です。この現象は新しい靴でも起こる可能性が有りますので、必ず「表面の素材」が水を弾くように防水スプレーやクリームでお手入れをして下さい。

③靴の内側の結露

結露・・・氷を入れたグラスや冬の窓ガラス、テントの内側に水滴がつく現象です。暖かい空気が冷やされ空気中の水蒸気が飽和水蒸気量を越えた時、余剰の水蒸気が水滴になります。当然、暖かい側に水滴が付きます。これと同じ現象が、登山靴でも起こります。「暖かい側=靴の内側」です。

空気中の含まれる水蒸気の最大量(飽和水蒸気量)は、温度によって決まります。温度が高いほど多く、低くなるに従って少なくなります。つまり寒い時ほど結露が起こります。そして登山靴の内側の水蒸気と言えば「汗」です。

気温が低く靴の内側が冷える➜歩くことで発汗する➜汗(水蒸気)が飽和状態を越え水滴になる➞靴の内側が結露する➜濡れ感が起こる

この連鎖により靴の内側が濡れます。この現象も新しい靴でも起こります。冬山・雪山では靴の内側に温度が伝わりにくい、革の厚い登山靴や中綿入りの登山靴がお勧めです。

④靴内部に雨が溜まる

②の表面素材のお手入れ不足と関係する事例です。表面素材のお手入れ不足により、表面素材から内部に浸入した雨がゴアテックスで弾かれます。表面素材とゴアテックスの間に溜まった雨が、傾斜によりつま先側に流れていきます。これによりつま先の素材が内部で濡れ、冷やされます。結果、③靴の内側の結露に繋がります。

登山靴の内側が濡れたと言う方のほとんどが、つま先部分の濡れを真っ先に感じるのは、この現象が考えられます。